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アサ(麻)はアサ科属で一年生の草本。麻繊維が他の植物からも採れるため大麻(たいま)または大麻草(たいまそう)とも呼ばれる。この植物から採れる麻薬を特に大麻(マリファナ)と呼ぶ。 日本語でアサと呼ばれる植物にアマ科の亜麻やイラクサ科の苧麻(カラムシ)があるが本項目とは全く別の種類の植物である。
種
概要雌雄異株。高さ2-3m、品種や生育状況によりさらに高く成長する。かつてはクワ科とされていたが、托葉が相互に合着しない、種子に胚乳がある等の理由でアサ科として分けられた。ヒマラヤ山脈の北西部山岳地帯が原産地といわれている。生育速度と環境順応性の高さから、熱帯から寒冷地まで世界中ほとんどの地域に分布している。日本にも古来より自生しており、神道との関係も深い。生育速度が速い事から、忍者が種を蒔いて飛び越える訓練をした逸話などが残っている。 古代から人類の暮らしに密接してきた植物で、世界各地で繊維利用と食用の目的で栽培、採集されてきた。種子(果実)は食用として利用され、種子から採取される油は食用、燃料など様々な用途で利用されてきた。20世紀初頭より、米国や日本を始めとしたほとんどの国で栽培、所持、利用について法律による厳しい規制を受けるようになる。近年この植物の茎から取れる丈夫な植物繊維がエコロジーの観点から再認識されつつある。繊維利用の研究が進んだ米国、欧州では、繊維利用を目的とし品種改良した麻をヘンプ(hemp)と呼称し、規制薬物および薬事利用を指し使用される事の多い植物名、カナビス(cannabis)と区別している。 葉や花にはテトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれ、これをヒトが摂取すると陶酔する。植物を乾燥した物(通称マリファナ)や、植物から作られた樹脂(通称ハシシ)はTHCを含有しており、ロシア、アフリカ、オーストラリア、ヨーロッパの一部を除く世界中で規制薬物の対象とされる。 医療目的としても価値があり、古くから果実は麻子仁(マシニン)という生薬として用いるほか、葉や花から抽出した成分を難病患者に投与する方法も研究されている。 栽培の歴史古くから栽培されていた植物の一つであり、元々は中東で栽培されていた物と考えられている。日本では紀元前から栽培され、『後漢書』の東夷伝や『三国志』のいわゆる魏志倭人伝に記述が見られる。日本では歌の題材になっているほか、風土記にも記されている。神道では神聖な植物として扱われ、日本の皇室にも麻の糸、麻の布として納められている。 中国では4500年前から栽培されていたようである。紀元前5世紀の歴史家・ヘロドトスは、スキタイ人が大麻を娯楽に使っている様を叙述している。 植物としての特徴栽培植物としては非常に急速に成長する。葉・花・果実には薬効がある。特に、葉や花に含まれるテトラヒドロカンナビノール(THC)は人体に作用し、摂取すると陶酔する。 アサは生育が速い一年草であり、生育の際に多量の二酸化炭素を消費し、繊維質から様々な物が作れるため、地球規模での環境保護になるという意見もある。 産業用のアサと嗜好用のアサは品種が異なる。前者については、陶酔成分が生成されないよう改良された品種が用いられる。また、品種が同じでも用途に応じて栽培方式が違う。前者は縦に伸ばすために密集して露地に植えられる方式が主であるが、後者は枝を横に伸ばすために室内栽培が多い。そのため嗜好目的のためのアサを産業的栽培だと偽って栽培するのは困難である。 嗜好目的のアサは、露地栽培または水耕栽培で育てられる。露地栽培のものは「バイオ」と呼ばれ、水耕栽培のものは「ハイドロ」と呼ばれる。この両者は陶酔の質に差があるとされ、愛好者はそれぞれ好みのものを選んでいる。 日本に自生するアサには陶酔成分である1%以下のテトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれている。他の品種は1.8から20%含有とされているため、確かに少ないが軽視できる量ではない。日本においてはアサの陶酔作用は麻酔いとして農家から嫌われたようであり、それを解消するために生み出されたのが改良品種トチギシロで、1982年から栽培が開始されている。 アサはその繁殖プロセスから、花粉が周囲2km程度に飛散する。このときに陶酔成分を多く含むアサの花粉を受粉した場合、これに関する遺伝子は優性遺伝するため、トチギシロも陶酔成分を含むことになる(つまり代返りする)。 このため、現在栽培されているトチギシロは、不法に持ち込まれたアサとの交配によって陶酔成分を含んでしまっているという説もある。このように交配されたアサはインドアサの水準までTHC含有量が上がるとは考えにくいが、実際北海道では自生するアサを採取してマリファナを生成する個人愛好家もいる[1]。 用途一般的に麻は覚醒剤やコカインなどと同種の「麻薬」としての悪評のみが一人歩きしてしまった。しかし実際には食用、薬用、繊維、製紙などの素材として用いられる有用な植物である。 茎衣類・履き物・カバン・装身具・袋類・縄・容器・調度品など、様々な身の回り品が大麻から得た植物繊維で製造されている。 麻織物で作られた衣類は通気性に優れているので、日本を含め、暑い気候の地域で多く使用されている。綿・絹・レーヨンなどの布と比較して、大麻の布には独特のざらざらした触感や起伏があるため、その風合いを活かした夏服が販売されている。大麻の繊維で作った縄は、木綿の縄と比べて伸びにくいため、荷重をかけた状態でしっかり固定する時に優先的に用いられる。伸びにくい特性を生かして弓の弦に用いられる。また神聖な繊維とされ神社の鈴縄、注連縄や神事に使われる。横綱の注連縄にも使われている。繊維を取った後の余った茎(苧殻、おがら)は、かつては懐炉用の灰の原料として日本国内で広く用いられ、お盆の際に迎え火・送り火を焚くのに用いられる。 現在も産業用(麻布等)栽培はあるが、減少傾向である[2]。
アサの種(果実)は麻の実の名で七味唐辛子にも含まれる
衣服としてエコロジー素材として注目を浴びている。 果実果実は生薬の麻子仁(ましにん)として調剤される。麻子仁には陶酔成分は無く穏やかな作用の便秘薬として使われる。栄養学的にはたんぱく質が豊富であり、脂肪酸などの含有バランスも良いため食用可能であり、香辛料(七味唐辛子に含まれる麻の実)や鳥のエサになる。果実を搾ることにより油を得ることができる。この油を含んだ線香がアロマテラピー用として市販されている。 葉および花嗜好品として詳細は大麻を参照 葉及び花冠(かかん)には陶酔作用があり、嗜好品として用いられる。陶酔を引き起こす主成分は、テトラヒドロカンナビノール(THC)といわれる物質であるが、これ以外に含まれる成分のバランスによって効果に違いが生じる。 特に、ラマルクにより命名された亜種のインド麻(C.indica Lam)は2000年以上前から中央アジアで品種改良され、一般的な大麻より多くの陶酔成分を含むので一般に嗜好品としての大麻と言えばこのインド麻を指す。また、インドやジャマイカなどではガンジャ(神の草の意)と称される。 医薬品としてテトラヒドロカンナビノールをはじめとしたカンナビノイドには医薬品としての効能があるという。エビデンスはないが、多発性硬化症などの神経性難病や緑内障に対し、アメリカの一部の州やイギリスやカナダ[3]、オランダといった国で処方箋薬として認可され、治療薬として試みられている。 合成テトラヒドロカンナビノールのドロナビノールはアメリカ合衆国でマリノールという商品名で販売され、末期エイズ患者の食欲増進、ガンの化学療法に伴う吐き気の緩和のために処方されている。[4] また、ドロナビノールはドイツにて、大麻抽出成分を含有するSativexはカナダにて[3]処方されている。日本では医薬品としての臨床試験は禁止されている。また、他にもうつ病、不眠症、てんかん、気管支喘息等の疾患にも効果があるといわれている。 緑内障への治療薬として幾つかの研究により、マリファナの摂取が眼圧の低下をもたらすことが示されている。緑内障の原因として眼圧の上昇による視神経の損傷が挙げられており、これらの研究発表により多くの人がマリファナ摂取を用いた眼圧の低下が緑内障の治療法になると考えた。1970年代にアメリカ合衆国で行われた研究は、マリファナの喫煙時に眼圧が低下することを示した。[5]マリファナもしくはマリファナから抽出された薬物が緑内障治療としての効果を持つか否かを解明する試みの一環として、1978年から1984年にかけてアメリカ国立眼科研究所は調査研究を助成した。それらの研究において経口的もしくは経静脈的に投与された時、もしくは、喫煙をした時に、マリファナの派生物は眼圧を低下させることが証明された。[6]しかし、目への局部投与ではそれは証明されず、また、市場で流通するその他の治療薬に比べて安全にかつ有効的に眼圧を低下させるかについても証明されなかった。2003年、アメリカ眼科学会(American Academy of Ophthalmology)は「現在利用でき得る薬物に比べて、緑内障治療の為にマリファナ使用することによる軽減されるリスク、及び、増大する恩恵の証明を科学的な証拠は示さなかった」との声明をだしている。[5] 注と文献
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