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タナゴ亜科 Acheilognathinae は、コイ目・コイ科に属する亜科の一つ。オスに鮮やかな婚姻色が出ることと、二枚貝の体内に産卵する習性が知られた淡水魚のグループである。模式属はタナゴ属。 総称として「タナゴ」も用いられるが、タナゴはこの分類群の中の一種 Acheilognathus melanogaster の標準和名でもある。
概要日本を含むユーラシア大陸に広く分布し、5属40種ほどが知られる。特に日本、朝鮮半島、中国などの東アジアは種類が多い。
日本には3属18種(2007年、アカヒレタビラがキタノアカヒレタビラ・アカヒレタビラ・ミナミアカヒレタビラの3亜種に記載)が分布するが、このうちタイリクバラタナゴとオオタナゴの2種類は中国などから移入した外来種である。 体はフナのような体型で、左右から押しつぶされたように平たい。種類によっては口元にコイのような2本のひげをもつものもいる。全長はいずれも数cm-10cm程度で、メダカとフナの中間くらいだが、オオタナゴやカネヒラ、イタセンパラなど10cmを超える種類もいる。同じ種類内ではオスがメスより大きい。 川やその周辺の湧水、用水路、ため池などの淡水域に生息する。食性は雑食性で、藻類、水草、プランクトン、小型の水生昆虫、魚卵など、いろいろなものを食べる。 繁殖行動タナゴ類は全ての種類がカラスガイやドブガイ、マツカサガイなどイシガイ科の淡水性大型二枚貝類に産卵し、孵化した稚魚もしばらく二枚貝の体内で生活するのが特徴である。他には同じコイ科のヒガイ類も二枚貝の中に産卵することが知られている。 春や初夏に繁殖するものが多いが、カネヒラやイタセンパラなどは秋に繁殖する。繁殖期のオスは光沢のある鮮やかな婚姻色を発現し、頭部に追星(おいぼし)ができる。一方、メスに目立つ婚姻色は出ないが、産卵管が細長く伸びる。 オスは条件の良い二枚貝をめぐって争うこともある。つがいができると、オスとメスは二枚貝の上にやってくる。まずはメスが二枚貝の出水管に素早く産卵管を差しこみ、二枚貝の外套腔内に数個から十数個の卵を産みつける。このとき、メスは産卵管を先端から出水管に挿入するのではなく、柔軟な産卵管の付け根を出水間の出口にあてがい、体内から体液とともに卵の塊を押し出すと、産卵管は内部を通過する卵と体液の圧力でしなって付け根から貝の体内に飛び込み、貝の鰓の間に卵を導く。メスが飛び退くと今度はオスが素早く二枚貝の上にやってきて、二枚貝の入水管付近に放精する。 タナゴ類の卵は直径数mmほどの楕円形で、コイ科魚類の中では大粒の部類に入る。卵は二枚貝の体内で受精し、仔魚は数日のうちに孵化するが、孵化後も1ヶ月、種類によっては半年ほども二枚貝の体内に留まり、卵黄を吸収しながら成長する。この間、多くの種では卵黄嚢にさまざまな形の突起が発達し、仔魚が貝の鰓の間に留まるのを助ける。卵黄を吸収して貝から飛び出す頃には、全長1cm近くまで成長している。 タナゴ類の宿主となるイシガイ科の二枚貝類には、魚類の鰓や鰭に付着するグロキディウム(Glochidium)という幼生期がある。この時期は淡水魚各種のひれなどに殻にある牙で食いついて皮膚の中に潜り込み、場合によっては養分を摂取しながら長期間寄生して、親貝から離れた場所に分布を広げている。このときにタナゴ類もグロキディウム幼生の宿主となるとする著書を見かけることも多いが、実際にはタナゴ類が宿主となることはほとんどなく、日本産のイシガイ類ではヨシノボリやオイカワなどを宿主とするものが多い。そのため、タナゴ類の保護のためにはイシガイ科の二枚貝だけでなく、グロキディウム幼生の宿主となる他の魚の保護も必須といえる。 人間との関係タナゴ類はモツゴ、モロコ、フナなどと共に見られる淡水魚の一つで、地域ごとにさまざまな種類がある。 タナゴやヤリタナゴなど、比較的数の多い種類は食用として漁獲されている。他の小魚と共に釣りや網、セルビンなどで漁獲し、佃煮や甘露煮などで食用にする。食べ物としての旬は冬とされている。 また、タナゴ釣りは江戸時代には大名や大奥女官ら上流階級の高尚な趣味とされ、蒔絵などを施した典雅な釣竿が用いられた。タナゴ釣りの釣り餌にはイラガの繭の中で越冬している前蛹が「玉虫」と呼ばれて珍重され、これの頭部を切断して切り口から体内組織を微細な釣り針に引っ掛けて少しずつ引き出し、丸く絡めて用いた。現代においても釣り趣味の1ジャンルとして確立している。 タナゴ類の方言はニガブナ(日本各地)、ボテ(琵琶湖周辺)、ベンチョコ(福岡県)、シュブタ(筑後川流域)などがある。「ニガブナ(苦鮒)」という呼称は佃煮などで食べると苦味があることに由来する。これはタナゴの英名"Bitterling"(苦い小魚)にも共通する。 しかし高度経済成長期以降は圃場整備、オオクチバスやブルーギルなど肉食性淡水魚の移入、農薬使用量の増加など、タナゴを取り巻く環境が大きく変化した。それまではわりと身近だったタナゴ類も、産卵床となる二枚貝類や他の小魚と共に次々に生息地を追われた。さらに鮮やかな婚姻色から観賞魚としても注目を浴び、希少価値も相まって各地でタナゴ類の乱獲が起こるようになった。 ミヤコタナゴとイタセンパラは1974年に種指定の天然記念物に指定され、採捕や飼育は禁止されている。他にも環境省レッドリストで以下の種類が絶滅危惧種としてリストアップされ、各地で保護活動が行われている(2007年改訂版)。
その一方、中国から移入したオオタナゴやタイリクバラタナゴは日本国内で分布を広げている。特にタイリクバラタナゴは日本在来種のニッポンバラタナゴと交雑して遺伝子汚染を起こし、問題となっている。他の種類でも、イチモンジタナゴがアユなど有用魚類の放流に伴って分布を広げた例が報告されている。 おもな種類
参考文献
関連項目 |
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