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フルート(Flute)は木管楽器の一種。リードを使わないエアリード(無簧)楽器であり、唇から出る空気の束を楽器の吹き込み口の縁にあてることで発する気流の渦(エッジトーン)を発音源とする。 現在、一般にフルートというと、ここで述べる、数々のキー装置を備えた、オーケストラに用いられる横笛を指すが、古くは広く笛一般を指した。特にJ.S.バッハなどバロック音楽の時代にあっては、単にフルートというと、現在一般にリコーダーと呼ばれる縦笛を指し、現在のフルートの直接の前身楽器である横笛を指すには、「横の」(トラヴェルソ)という形容詞を付けて「フラウト・トラヴェルソ」と呼ばれていた(単に「トラヴェルソ」と略されることもあった)。 現代では、少数のグラナディラ(クラリネット等の木管楽器の管体にも用いられる。グラナディラはもはや黒檀とはみなされない)などの木製楽器を除いて、通常は白銅 (ニッケルシルバー)、洋銀 (洋白)、銀、金、プラチナなどの金属で作られるが、歴史的、構造的に、金管楽器ではなく、無簧の木管楽器に分類される。
概要一般的なフルートは、同属楽器と区別する場合、グランド・フルートまたはコンサート・フルートとも呼ばれ、通常C管である。19世紀にドイツ人フルート奏者・楽器製作者テオバルト・ベームによって大幅に改良され、正確な半音階と大きな音量、貴金属の管体を持つようになった。この改良によって生まれたフルートは、ワーグナーをして「その大砲をどけろ!」と言わしめた代物である。 フルートは発音にリードを用いないため、ほかの管楽器よりもタンギングの柔軟性は高い。また、運指が比較的容易なことから運動性能は管楽器の中で最も高く、かなり急速な楽句を奏することも可能である。管楽器の中で音量は小さい方であるが、音域が高いため耳につきやすい。フルートの音色は鳥の鳴き声を想起させ、楽曲内で鳥の模倣として用いられることも多い。有名でわかりやすい例として、サン=サーンスの組曲『動物の謝肉祭』の「大きな鳥籠」、プロコフィエフの交響的物語『ピーターと狼』などが挙げられる。 フルートは独奏や室内楽で用いられるほか、オーケストラおよび吹奏楽においても定位置を確保しているが、ジャズでの使用頻度はサクソフォーンやトランペットなど、ほかの管楽器と比較して低い。また、ジャズ専門のフルート奏者は少なく、サクソフォーンなどのジャズプレイヤーが持ち替えるか、フルート奏者がクラシックとジャズの両方で活動するというケースが多い。 楽器はキーを右にして構え、下顎と左手の人さし指の付け根、右手の親指で支える。楽器は両肩を結ぶ線と平行に持つのではない。右手は左手に比べて下方、前方にある。奏者は正面ではなくやや左を向き、右に首をかしげている。 昔はもっぱら木で作られていたが、後に出現した金属製が現在では主流となっている。なお、発音に唇の振動をもちいないので、金属でできたフルートも木管楽器である。 歴史古代 - ルネサンス時代フルートを広義に考えて「リードを用いず、管に息を吹き付けて発音する楽器」とするならば、その最も古いものとしては、4万年前のものと推定される熊の足の骨で作られた「笛」がスロヴェニアの洞窟で発見されている。また、それほど古いものでなくとも数千年前の骨で作られた笛は各地から出土しており、博物館などに収められている。これらの笛は当時のほかの楽器同様、主に宗教的な儀式に用いられていたと考えられている。 世界各地で用いられていた原始的な笛は、縦笛かオカリナのような形状の石笛がほとんどであった。ギリシャ神話の牧神、パンが吹いたとされるのも縦笛である。一方、現在我々が使用しているフルートにつながる横に吹く方式の笛が、いつ、どこで最初に用いられたのかははっきりしていないが、一説には、紀元前後、あるいはそれ以前のインドに発祥したといわれており、これが中国に伝わり、さらに日本や、シルクロードを通ってヨーロッパに伝えられていったと考えられている。横笛の歴史は、西洋よりも日本を含めた東洋の方がずっと長いのは事実である。 ルネサンス時代のヨーロッパでは、横笛はあまり一般的な楽器ではなく、軍楽隊や旅芸人などが演奏するだけのものであった。構造は円筒形でトーンホールが6つ、キーはなく、楽器は分割できないようになっていた。大きさもさまざまで、ソプラノ・アルト・テナー・バスといった種類があり、これらで合奏(コンソートと呼ばれる)も行なわれていた。現在では、このようなフルートを指してルネサンス・フルートと呼んでいる。 バロック時代18世紀半ばごろまでのバロック時代、単に「フルート」といえば縦笛(リコーダー)を指し、現在のフルートの原型となった横笛は「フラウト・トラヴェルソ(flauto traverso, 「横に吹く」の意)」と呼ばれて区別された。この時代のフラウト・トラヴェルソの多くは木製で、歌口と反対側の先端が細くなった円錐形、トーンホールは6つ、キーが右手小指に1つ、最低音はD4、最高音はE6(ト音記号で上加線3本の位置)までというものが一般的であった。楽器の構造としてはD管であるが、楽譜は実音で記譜されたため移調楽器ではない。 詳細は「フラウト・トラヴェルソ」を参照 古典派 - ロマン派初期18世紀半ばから19世紀前半にあたる古典派の時代になると、フルートの半音階や高音域を実現するためにキーメカニズムが付け加えられていき、最高では17ものキーがついた楽器があったといわれる。しかし、これらは必要に応じて付けられたもので、統一されていたわけではなく、運指も複雑であった。この頃一般的に使われていたのは6キーあるいは8キーのもので、管体はバロック時代と変わらず木製で円錐形、最高音はA6とされていた。このような楽器をバロック時代の1キーフルートと区別して、「クラシカル・フルート」と呼ぶことがある。 ベーム式フルート1820年ごろから活躍していたイギリス人フルート奏者 C. ニコルソン(1795年 - 1837年)は、その手の大きさと卓越した技術によって通常よりも大きなトーンホールの楽器を演奏していた。ドイツ人フルート奏者で製作者でもあったテオバルト・ベームは、1831年にロンドンでニコルソンの演奏を聞き、その音量の大きさに影響を受け、本格的な楽器の改良を始めた。1832年に発表されたモデルは以下のようなものであった。
これはGisオープンの機構を除いて、フランスで受け入れられた。ベームはその後も改良を続け、1847年に発表されたモデルは、
という、現在のフルートとほぼ同じものであった。これ以後現在までに加えられた変更は、フラット系の調を演奏するのに便利なように、低音域および中音域の変ロの運指を容易にするためのブリッチャルディ・キーが付け加えられたことと、フランスの人達がGisオープン式に馴染まなかったために、Gisクローズ式のものが多く用いられた程度である。 ベーム式フルートは、最初にフランスで、後にイギリスで使用されたが、発祥の地であるドイツでは20世紀に入るまで受け入れられなかった。ドイツの人達はこの新しい楽器を「全音域にわたって単調過ぎるほど均質で高音域では特に甲高い」とみなしたのである。さらに、この頃のドイツ音楽界に大きな影響を持っていたワーグナーがベーム式フルートの音色を激しく嫌ったことも、ドイツでの普及を妨げた大きな要因といわれている。 ロマン派中期以降19世紀半ば以降ベーム式フルートは、演奏性能の可能性と群を抜いた作りの良さが認められ、パリ音楽院の公式楽器に指定され、アンリ・アルテ、ポール・タファネル、フィリップ・ゴーベール、モイーズらフルート科教授によってその奏法の発展と確立がなされた。また、オーギュスト・ビュッフェ・ジュニア、クレール・ゴッドフロイ・シニア、ルイ・ロットらの楽器製作者がベーム式楽器の普及を助け、ドビュッシー、フォーレをはじめとする作曲家たちも、多くの名曲を書くこととなった。こうして、フランスは一気にフルート先進国としての地位を確立したのである。パリ音楽院では20世紀初頭において他の木管楽器も同様に演奏と作曲レパートリー双方の発展を遂げ、木管楽器を中心にパリ楽派(エコール・ド・パリ École de Paris)と呼ばれる一派を形成するに至った。 一方、ドイツやオーストリアでは、金属製の音色を好ましく思わないながらも、ベーム式メカニズムの長所を認め、20世紀に入る頃には、メカニズムはベーム式で管体が木製の楽器が用いられるようになった。 近現代第二次世界大戦後、レコードの普及や放送技術の発展とともに、ランパルがソリストとして活躍し、フルートの魅力を世界中に示すこととなった。また、モイーズがカリスマといえるほど、教育者としての影響を長い間持ち続けていたことと重なって、世界中でフルートの演奏スタイルといえば、フランス風のそれに大きく偏ったものとなっているといえる。楽器製作に関しては、現在、フランスはその地位をアメリカと日本に明け渡しており、世界的なシェアはこの2国がほとんどを占める。 前述の通りドビュッシーはフルートにおけるレパートリー拡張の第一人者であるが、中でも独奏曲『シランクス』はフルート独奏のための作曲という行為において重要な位置を占めている。 『シランクス』以後において初めてフルートの演奏法の拡張を試みた音楽は、エドガー・ヴァレーズの『密度21.5』である。これはキー・パーカッションといって、キーを強く叩きながら吹くことによるアタックの音の変化を求めた特殊奏法を開発し、また超高音域を執拗に求め演奏における音域の拡張に成功した。O・ニコレいわく「アンチ・シリンクス」。 ちなみに現在では一般的である、ヴィブラートの存在が確認されたのは第二次世界大戦以降で、それ以前はかけていなかったのではないかと推測されている。 その他戦前における特殊奏法としては、ジャック・イベールのフルート協奏曲のカデンツァ、リヒャルト・シュトラウス、ドミートリイ・ショスタコーヴィチの交響曲第8番などでは、巻き舌によるフラッターツンゲ奏法が試みられた。同じくイベールの協奏曲ではハーモニクス奏法も要求されている。 戦後の現代音楽では、まずフルート奏者のブルーノ・バルトロッチが重音奏法を体系化した教本を出版し、またピエール=イヴ・アルトーやロベルト・ファブリッツィアーニなどその他多くのフルート奏者、またサルヴァトーレ・シャリーノらの作曲家によって息音を含む奏法、ホイッスルトーン、タングラム、リップ・ピッツィカートなど新しい奏法も次々と開発された。これらの噪音的な奏法は現代音楽の多くのレパートリーで採用されることになった。当初は物珍しさからこれらを無反省に取り入れただけのレパートリーも乱発されたが、これら「現代音楽的語法」は今やあまりに一般的なものとなったために、作曲における方法論や構造が堅強な作品でない限りは次第に淘汰されつつある。しかしその中でルチアーノ・ベリオの『セクエンツァI』などの優れた名曲は現在も「古典」として多くの奏者によってコンサートや教育現場で取り上げられ、聴衆にも親しまれている。 現在はキーシステムにMIDI機構を取り付けた「MIDIフルート」と呼ばれる楽器も存在する。これは発音原理は通常のフルートと同じであり特に電子的な発音機構によるものではないが、MIDIの出力機構を備えており、奏者の演奏情報をリアルタイムに別のMIDI機器やコンピュータに伝えることができる。同一の指使いで複数のオクターヴの可能性のある音や演奏上の強弱(ヴェロシティ)の検知のためのセンサーも備わっている。ただし楽器は通常のものに比べて相当重い。ピエール・ブーレーズが『エクスプロザント・フィクス(爆発・固定)』で用いられるほか、IRCAMなどを中心に援用が見られる。 音域コンサート・フルートの基本的な音域はC4(中央ハ)から3オクターヴ上のC7であり、ほとんどの楽曲はこの範囲で作曲されている。ただし、最低音はH足部管を用いる場合、B3が可能であり、現代ではほとんど見かけることはないが、B♭3足部管も存在していた。また、最高音は、上に広げられる努力が重ねられており、F7までの運指が比較的広く知られている。チューニングする(他の楽器とピッチを合わせる)際には、オーケストラでA5を、吹奏楽ではB♭5を用いる。 なおラヴェルをはじめ幾つかの合奏曲などでB♭3(A#3)が存在するが、これは一般的に普及しているB足部管を用いても演奏不可能であるため、奏者によっては、特注の金属製管または厚紙などを丸めたものを足部管端に装着し演奏をすることもある。B♭3(A#3)が存在する理由としては和声の構成の理論上の音、作曲当時の楽器にB♭足部管が存在していた、作曲者の洒落等と考えられている。 最低音からB4までの音域は、低音域、あるいは第1オクターヴなどと呼ばれ、音量は大きくないが、幅広く柔らかい音色を特徴とする。特に最低音に近いいくつかの音は明瞭な発音が難しい。 C5からB5までの音域は、中音域、あるいは第2オクターヴなどと呼ばれ、表情豊かな音色を持ち、音量の変化が容易である。 C6からB6の音域は、高音域、あるいは第3オクターヴなどと呼ばれ、明るく輝かしい音色で、音量は比較的大きい。また、運指は中低音域に比較してやや不規則である。 C7より上の音域は、第4オクターヴと呼ばれ、高い音ほど発音が難しい。発音に非常に速い呼気を要するため音量は必然的に大きくなる。また音色は鋭く、空気音の混じったものになりがちである。この音域が開発されたのは20世紀に入ってからであり、現代音楽で使用されることがある。この音域は、楽器によって発音の難易度やピッチのばらつきも大きく、運指法も一定していない。現在はC8の運指まで発見されてはいるが、実際その音を出せる人は稀である。 ただし、音域に関する呼称は厳密なものではなくやや幅がある。例としてC6を中音域とするか高音域とするかは用語の使用者によって異なるため「チューニングA(吹奏楽ではB♭)の上のC」などと呼ぶのが確実である。 標準的な運指を用いた場合の音響学的な倍音モードは次の通りである。
なお、フルートでは半音階のみならず、特殊な運指によって微分音を奏することも可能である。さまざまな運指が存在するが、一般的にはカバードキーよりもリングキーの方が容易である。主に現代曲に用いられ、作曲家が運指を指示することもある(例:B・ファーニホウ『ユニティカプセル』、K・アホ『ソロIII』、K・サーリアホ『ラコニズムドゥレル』など)。 微分音程システム「キングマシステム」については後述 楽器の構造フルートはかなり全長の長い楽器(約70cm)であるため、全体を三分割して保存・携帯する。 歌口(吹き込み口)がある部分を頭部管、一番長い部分を胴部管、一番短い部分を足部管と呼ぶ。 頭部管を挿入する長さを変化させることにより全体の音高が変わるため、楽器が分割構造になっていることは、他の楽器とピッチを合わせる(チューニング)場合にも重要である。
C足部管とB足部管そもそものフルートはD管であり、その低音域を拡張する目的で後に足部管を継ぎ足した姿が標準的な現在の姿になったのであるが、現在は移調楽器としてみなされてはいないものの、古来の姿のまま足部管を持っていないピッコロやフラウト・トラヴェルソの最低音がD音であるのは、その名残である。 現代のフルートにおいては足部管が標準的に使用されているが、足部管は胴部管と同じ内径の円筒形で、3つないし4つのトーンホールを持つ。そのトーンホールが3つの場合はC足部管と呼ばれ、そもそもの最低音D4から下部に拡張された最低音はC4である。トーンホールが4つの場合はB足部管(日本ではドイツ音名に由来してH(ハー)足部管(H-Fuß)と呼ぶ場合もある。アメリカの楽器メーカーの場合はB foot jointと表記)と呼ばれ、そもそもの最低音D4から下部に拡張された最低音はB3である。B足部管を用いると全体の音色はやや太く強めになるといわれ、リングキーにする場合も多い。また、高音域が安定する(逆にいえば変化をつけにくい)ともいわれている。B足部管を用いることによって一部の運指[2]は影響を受ける。 タンポ(パッド)もっとも一般的にフルートに使われているタンポは、フェルトにフィッシュスキン(動物の内臓の皮から作られているものもフィッシュスキンと呼ばれる。)を巻いたものである。トーンホールを容易に塞ぐことのできる点、響きを止めない点、湿気や水分にも極端に反応しにくい点等から上記の材質が一番優れている、というのが使われる理由である。これは金属のフルートをテオバルト・ベームが開発した時代から変わっていない。素材に関しては現代においてあらゆるもの(ゴム、シリコーン、コルク等)が実験されているが音色、扱い、加工等問題の面から未だフェルトを超える材質が見つからないと言うのが現状である。 タンポで有名なメーカーとしては「ストロビンガー・パッド」を開発したアメリカのストロビンガー社がある。 カバードキーとリングキーカバードキー(クローズドキー、ジャーマンモデル、ジャーマンスタイル)は、キーに取り付けられたタンポでトーンホール全体をふさぐ物である。初心者用の楽器の多くがカバードキィで作られており、指で直接塞ぐキィ以外の連結のキィと同じカップ、タンポで成り立っているため大量生産に向いている。 対して、リングキーの楽器ではトーンホール上に指が置かれる5つのキー(右手の人差指、中指、薬指、左手の中指、薬指)に穴があいており、指でその穴をふさいで演奏する。 リングキー(オープンキー、オープンホールシステム、フレンチモデル、フレンチスタイルともいう)という呼び方は本来クラリネットやオーボエにあるような、細くてパッドを含んでいないキーのことを指し、フルートに使われているものは厳密には「パーフォレーテッド・キー (perforated-key)」と呼んで区別されるが、一般的にはフルートの場合もリングキーと呼ばれている。特徴は軽く明るい音色である。穴をふさぐ程度を変化させることによって、ポルタメント、微分音程などの技法が楽に演奏できるようになるほか、ピッチ調節などのための替え指もカバードキーより多く利用できる利点があるが、穴を正確にふさがなければならないため、手が小さい場合には演奏が難しい場合もある。また重音のための特殊な運指の幅も大きく広がる。 インラインとオフセットフルートの管体には多くのキーが並んでるが、胴部管上側面のキーがすべて一直線に並んでいるものを「インライン」、左手の薬指にあたるキーが外側(左腕に近い方)に少しずれているものを「オフセット」と呼ぶ。ベームが製作した楽器はすべてオフセットであり、より楽な手の形で操作することが可能である。オフセットは構造的にシンプルで、メンテナンスもインラインより容易となる。しかし、笛のほぼ中心に座金、ポストを半田付けするため、インラインに比べ、多少の響きの損失があるとする見方もある。一方、インラインの楽器はリングキーに多く、見た目は美しいが、正確にキーを押さえるために左手薬指をオフセットの場合より多く伸ばす必要があるため、手が小さい奏者には向いていない。インラインの楽器の方が、製作する際の部品点数は少なくなるが、同一軸に配置されるキーの数が多いためメンテナンスはオフセットに比べ面倒である。 Eメカニズム「Eメカニズム」「スプリットE」は、第3オクターヴのホ音(E6)が楽器の音響学的構造から出しにくく、またピッチが高い場合が多いため、これを解消するために考案された機構である。一般的なEメカニズムは、キーシステムの追加によりE6の運指で閉じるキーを増やすもので、E6の発音およびピッチは改善されるが、特定の換え指およびトリル運指が使えなくなる。また、楽器がわずかに重くなるため、音色に影響するという意見もある。ドイツ系の奏者、メーカーのフルートに装備されることが多く、逆にフランスではEメカニズムの音響は不自然とされ一般的ではない。ドイツの古いメーカーには通常のEメカニズムよりも更に多くのキィを塞ぐ「ダブルEメカ」というシステムも存在する。 メーカー、オフセットかインラインか、ピンありかピン無しか、ブリッジが外側にあるか内側にあるか、によりシステムが異なるため一口にEメカニズムと言ってもさまざまである。 通常Eメカの装備されていない楽器には、キィポストの不足による耐久性の問題、外観を損なう、改造費用等の問題等の理由からEメカを後付けすることは難しい。ユーザーの「Eメカの後付け」発注を前述の理由から断固拒否するメーカーもあれば、後付け工事を行っている所もある。その見解は各メーカーの方針によってさまざまである。 楽器メーカーによっては、同様の効果を得るためにキーシステムの追加ではなく特定のトーンホールを小さく(もしくは半円形に)する方法を採用している場合があり、これを「ニューEメカニズム」「Lower G insert」「G doughnut」と呼んでいる。この方法では、使えない運指が発生することはほとんどないものの、第1・第2オクターヴのイ音 (A4, A5) のピッチに影響する場合がある。 また、キーカップを押さえるレバーを途中で分割、可動式にしEメカニズムのオン・オフを切り替えられるようにしたクラッチ式Eメカニズム(Eメカニズム・ヒンジ)も存在する。 F#メカニズム第3オクターブのホ音(E6)と同様の理由で、第3オクターヴの嬰へ音(F♯6)も、音響学的構造から出しにくい。これを解消するために考案された機構がF#メカニズムであるが、構造の複雑さや耐久性の低さ等の理由から、商品化しているメーカーは少ない。 CisトリルキーAisレバーの上流にあり、B-C#のトリルを容易にするための右手人差し指で操作するキーである。それだけではなく、第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルも容易になり、弱奏におけるG#6の発音が容易になる。Cisトリルトーンホールは、DトリルトーンホールとBトーンホールの間にあり、主要なトーンホールと同じ大きさで、Bの運指にCisトリルキーを押すとC#のピッチが合うように設計されている。また、通常のCisトーンホールは極端に小さいため発音の困難、ピッチの不安定、音色の問題が伴うが、トリル以外のCisにもCisトリルキーを活用することで、これらの欠点を補うことが可能である[1]。デメリットとして、D5・D#5・D6の音色・音程を若干犠牲にする、楽器が重くなる、取り付け費用が高価であることなどが挙げられるため、Cisトリルキーを標準装備するメーカーはほとんどないが、アメリカでは非常に人気のあるオプションである。 G-Aトリルキー第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルを容易にするためのキーである。かつてドイツのフルートでよく使われたメカニズムであるが、現在では同じ機能をCisトリルキーで実現できる上、前述のように用途も広いためCisトリルキーに取って代わられつつある。 GisクローズシステムとGisオープンシステム表側にGisトーンホールが1つもつものが「Gisオープン式」、表側と裏側にGisトーンホールを2つもつものが「Gisクローズ式」である。日本で「フルート」と呼ばれるものは基本的にGisクローズである。両者の運指は一緒ではない。日本にもGisオープンシステムのフルートを愛用するプロ奏者は存在する。 Gisクローズ式では左手薬指を押すとG,Gisトーンホールの双方が閉じ、左手小指を押すことにより裏側のGisトーンホールが開く仕組になっている。 Gisオープン式ではGトーンホールを左手薬指、Gisトーンホールを左手小指で押して閉じる。 フルートの響きはトーンホールの数、および管体に座金を半田付けした面積に比例して悪くなると言われているため、トーンホールを一つ分、座金、ポスト1セット分を節約できるGisオープン式の方が音色が優れていると言う見方がある。 また、G♯やE♭3等、Gisトーンホールがあいている状態の音において、カップの開放の方向が前方を向いているか、後方(下)を向いているかが奏者に対し大きな響きの違和感を与える。通常フルートの音は歌口を含めた開放された全ての穴から発せられるので、その穴が後方に向かって開放されていたのでは響きが前に飛ばないのは明らかである。 しかしこのオープン式の運指では常に左小指を動かすことが要求されるためGisクローズ式に比べ指回しが激しく困難になる。この点がGisクローズ式が広く世界に分布した理由である。 Gisオープン式では前述の「Eメカニズム」をオプションで取り付ける必要がない。 アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいて一般的に使われているのはGisクローズ式であるが、ロシアを始めとする東欧の諸国ではGisオープンが現在でも珍しくない。 フルートの教則本の著者として有名なP・タファネルの使っていた楽器は左手小指のレバーを押すとそれまで塞がれていたG♯のカップが上に上がると言うシステムのものだった。これは現在のメーカーでも再現可能だが、機構に若干の抵抗が存在するため耐久度は決して高いものではない。 ソルダードトーンホール(ハンダ付け)とドローントーンホール(引き上げ)金属製の楽器の場合、トーンホールが管体から立ち上がってキー(タンポ)と密着しているが、この立ち上がり部分をどのようにして製作するかによる分類である。「ソルダードトーンホール」は管体となるパイプに別の部品をはんだ付けすることによりトーンホールを作成するのに対して、「ドローントーンホール」はパイプそのものを引き上げ加工して、トーンホールを形成する。管厚やキーメカニズムなどが同じであれば、ソルダードトーンホールの方が重くなる。ソルダードトーンホールの方が吹き込む際に抵抗感が増すとされる。比較的安価な楽器の多くはドローントーンホールである。 特殊奏法 (現代奏法)フルートは近代音楽や現代音楽において特に特殊奏法が多く開発された楽器である。一つの奏法を取り上げても作曲者や奏者によりさまざまな呼称、やり方がある。特殊奏法については未だ発展途上であり新しい奏法が今後も開発されていくことが予想される。
上記の特殊奏法を組み合わせ、新たな音響を作り出すこともできる。 例 フラッター+発声奏法、重音奏法+スラップ・タンギング フルートの印象的な作品詳細は「フルートで演奏される曲目」を参照 フルートメーカー表記は「呼称ないし略称(五十音順) / もしあればブランド名称 / 製作会社名 / 製作拠点国名」。
歴史的メーカーベーム式のメーカーを記載。
同属楽器フルートの同属楽器には次のようなものがあるが、低音部楽器に関しては、まだ新しく珍しい楽器であるため、各国において一定の呼称が定着してはいない状態である。
これらの楽器で、フルート属を構成する。なお、コンサート・フルートは実音楽器であるが、その他の派生楽器は、慣例的に、記譜上の音域および運指がコンサート・フルートとおおむね合致するよう移調楽器としてト音記号を用いて記譜される。 現在、フルート属の名称については論議をかもし出しており、例えば、最低音域となる「オクトコントラバス・フルート」は、コントラバスのオクターヴ下の音域を担当するという名称となっているが、実際には弦楽器の「コントラバス」や「コントラバス・クラリネット」などの横に並ぶ音域となっており、名称が1オクターヴ低くずれている。また、現行の「コントラバス・フルート」の音域は、弦楽器の「コントラバス」や「コントラバス・クラリネット」などの音域よりも1オクターヴ高くなっており、本来なら単純に「バス・フルート」と呼ばれるところとなる。そもそも、現行の「バス・フルート」がバス音域に該当しておらず、そこから順番に名称がずれてきており、徐々に普及しつつある新しい低音部フルートの普及を前に、他楽器との整合性を保つため、同属楽器の整理が整然としているクラリネットやサクソフォーンに習って、フルート属においても呼称の再検討が世界的に提唱され始めている。参考リンク先[3][4] アルト・フルート使用曲
など バス・フルート使用曲
など その他フルートの管体に開けた横穴に薄い特殊フィルムを貼って共振させ独特の音を出すビービーフルート(商品名:Be-mode コタト&フクシマ)と呼ばれる楽器が存在する。これは中国の民族楽器の横笛の構造にインスピレーションを得たもので、通常のフルートの音質よりも倍音を多く含んだ音色になる。 スライドフルート(スライドホイッスル)と呼ばれる楽器がある。フルートと名がついてはいるが、オーケストラの中では通常打楽器奏者が演奏を担当するという別の楽器である。誰でも演奏することができるほど簡単な構造でトロンボーンのように管の長さをスライドさせることにより音程を変えることができる。別名で海の妖精の淫靡な声を意味するシレーヌアクメと呼ばれる。 微分音を用いた音楽を演奏することに特化した特殊なシステム(キングマシステム)というものがある。オランダの楽器製作者であるE・キングマによって開発され、キイの上に更に小型のキイをとりつけた「キィ・オン・キィシステム」の採用とリングキイのリング部分の内径を見直すことにより通常のフルートと演奏方法をまったく変えることなく正確な微分音程を容易に演奏することを可能としている。このキングマシステムを採用し、実際に商品化したフルートメーカーは現在キングマ、ブランネン、サンキョウ(サンキョウはこのシステム名を「キグマシステム」として販売している。)である。 フルートの長さは約70cmあるため、小学校低学年以下の子供が演奏することは困難であるが、教育用楽器として幼児用フルートが製造されており、頭部管をU字型に曲げる、足部管を除く、指が届き易いよう補助キーを設ける、などの方法で、体の小さな5歳程度の子供でも演奏できるよう配慮されている。幼児用フルートはヴァイオリンの分数楽器と同様に、早期音楽教育のために導入される場合があるが、呼吸器が未発達な段階では管楽器であるフルートは時期尚早として疑問視する声もある。 歴史的・民族的なフルートバロック・フルート(フラウト・トラヴェルソ)バロック期に用いられた古楽器。現在では一般的に、フラウト・トラヴェルソ(イタリア語読み)といえば、前出#バロック時代で述べたようなバロック・フルートのことを指す。 詳細は「フラウト・トラヴェルソ」を参照 アイリッシュ・フルートアイルランドの民族音楽(いわゆるケルト音楽)で用いられるフルート。といっても民族楽器といえるほど歴史あるものではなく、ベーム式フルートが普及する以前(#古典派 - ロマン派初期)の19世紀ごろにクラシック音楽で用いられたフルートの生き残りといえるものである。近年ではアイルランド音楽以外にも用いられることがあり、フォーク・フルートとも呼ばれる。 バロック・フルートと同じく木製でD管だが、6孔でキーなしかシンプルなキーのみで、あまり多くの半音を奏でるのは困難である。円錐管のものが多く、管体はグラナディラなどの硬い材質が好まれる。頭部や連結部分に金属をあてがうものもある。太く深みのある、ややかすれた感じの音色で、現在のC管フルートより調性は高い割には、比較的低音域を吹くことが多い。 アイルランド語:fliúit(フルート)もしくはfeadóg mhór(ファドーグ・ウォア:「大きなホイッスル」の意味) ルネサンス・フルート前出#古代 - ルネサンス時代で述べられたルネサンス期のフルートも、現在古楽器として復元楽器が用いられている。構造、運指法はアイリッシュ・フルートに似ているが、円筒管で、よりシンプルな構造である。ルネサンス曲以外のレパートリーに応用する試みもされている。 主なフルート奏者(フルーティスト)フルート奏者#著名なフルート奏者の一覧またはクラシック音楽の演奏家一覧#フルート奏者を参照。 主な教則本H. Altès によるもの
注釈
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