M資金

M資金(エムしきん)とは、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した財産などを基に、現在も極秘に運用されていると噂される秘密資金である。

M資金の存在が公的に確認された事は一度も無いが、その話を用いた詐欺の手口(M資金詐欺)が存在し、著名な企業や実業家がこの詐欺に遭い、自殺者まで出した事で一般人の間でも有名になった。

Mは、GHQ経済科学局[1]の第2代局長であったウィリアム・フレデリック・マーカット(William Frederick Murcutt)少佐(後に少将)の頭文字とするのが定説となっている[2]

目次

M資金の由来

第二次世界大戦終戦時の混乱期に、大量の貴金属やダイヤモンドなどの宝石類を含む軍需物資が、保管されていた日銀地下金庫から勝手に流用されていた隠退蔵物資事件や、件の日銀地下金庫にGHQのマーカット少佐指揮の部隊が調査・押収に訪れた際に、彼らによる隠匿があったとされた事件、などが発生した。

GHQの管理下に置かれた押収資産は、戦後復興・賠償にほぼ費やされたとされるが、資金の流れには不透明な部分があり、これが“M資金”に関する噂の出典となった。

こうした噂が真実味を持って信じられた背景には、降伏直前に旧軍が東京湾の越中島海底に隠匿していた、金塊1,200本・プラチナ塊300本・銀塊5,000トンという大量の貴金属が1946年4月6日に米軍によって発見された事件や、終戦直後に各種の軍需物資が隠匿され、闇市を通じて流出していた(そのひとつが旧軍で特攻隊員などに興奮剤として服用させていたヒロポンであり、現在に至る覚醒剤渦の根源となっている)時期の記憶が、多くの日本人の間で鮮明であった事が挙げられる。

また、戦後のGHQ統治下で構築された、いくつかの秘密資金が組み合わされたものが現在の“M資金”の実態であると主張する意見 [3] もあり、それによれば、

  1. M資金:マーカット少佐に管理され、旧軍が占領地から奪った工業用ダイヤモンド、プラチナ、金、銀などの物資をGHQが接収して売却した資金
  2. 四谷資金:チャールズ・ウィロビーによって闇市の活動から集められ、反共計画に使われた資金
  3. キーナン資金:ジョセフ・キーナンの名にちなんだ没収財産を元にした資金
  4. 財閥解体後の株式売却益、米国からの援助物資および石油などの認可輸入品の売却益といった資金

といった、GHQの活動を通じて形成された資金を統合したものが“M資金”であり、その運用は日本政府の一部の人々によって行われており、実際に幾多の国家的転機に際して利用されて来た歴史を持つ、としている。

M資金詐欺の代表的な手口

M資金詐欺は、詐欺の存在がある程度社会的に認知されてしまうと、成功する可能性が低くなってしまうため、その流行には認知度が低下する頃に復活するという傾向があり、昭和30年代から現代に至るまで、ほぼ同じ手口・内容のM資金詐欺が繰り返されている[4][5]

M資金詐欺師が目を付けるのは、企業の経営者や実業家といった、それなりに社会的地位のある人々であり、彼らが詐欺に遭ったきっかけは、ビジネス上の新規展開や業績不振の打開のために、大きな投資を必要としているが、金融機関からの借り入れが難しい状況にあった、という人々が多い。こうした情報は金融機関の与信担当者や、単件・大口ベースの金融業者から漏れた情報を、M資金詐欺師がキャッチしている場合がほとんどである。

尚、“M資金”の実在を信じている人々は、M資金詐欺は実在するM資金がなんらかの形で投入された直後に急増し、M資金詐欺師のグループは何らかの痕跡をトレースしてM資金の動向をキャッチできる立場にいる人々を協力者にしている、と主張しているが、その真偽は不明である。

M資金詐欺師は、被害者を信用させるためのもっともらしい小道具を作るために、財務省(旧大蔵省)内部で使用される封筒や便箋などを様々な伝を使って入手し、時には財務省の庁舎内で被害者と会うなどして、当局との関係を強く類推させる事で被害者を信用させてゆく。

やがて、おもむろに巨額の金額が記された、偽造の“国債還付金残高確認証”などを見せ、多くの被害者にとって未知の書類・用語を駆使して思考を麻痺させ、下記のような虚実織り交ぜた話で、被害者の欲求につけ入り、からめ取って行く。

  • M資金は、ごく限られた日本政府の高官やアメリカ政府の関係者によって運営される秘密組織によって、その一部が管理されてきた。
  • その巨額の資金(1950年代で800億円、現在では数十兆円ともされる)は、1951年の講和成立(サンフランシスコ条約の締結)により、その一部が日本側に返還され、一定の条件の下に秘密組織により適切と判断した個人とその団体に委譲され、保有資金が最大限有効に活用され今日に至っている。
  • この資金を一定の制約の下に、非常に有利な条件(利息、返済、課税)で資金委譲を受ける資格を得た者がその恩恵に与る。
  • この資金の恩恵に与る有資格者には、一定の条件を満たす人格者(社会的信用、資金管理及び経営能力、地域社会における指導力、人心掌握力等に優れる者)であることが求められる。
  • 更に、この資金の有効活用に鑑み、十分なる理解力、発想力、想像力、継続力を具えることが必須となる。
  • そして、これらの資格を証明するものとして、提供資金に見合った申込金、手数料などの支払いが事前に必要となる。(多くの場合、それらの申込金、手数料は提供資金よりはるかに低額に設定され、数千万円から数億円の金額である。)

上記の話を信じ、M資金の恩恵に与ろうとした被害者が金を用意して仲介者(詐欺師)に渡した後、その人物はそのまま行方不明になる、というケースが典型的である。

なかには、すぐに姿を消さずに“通常では申込金の受付から審査まで数ヶ月かかりそうなので、それを加速するための運動費を政治家に提供する”といった口実で、更に金を引き出すM資金詐欺師もいる。

多くの場合、被害者はビジネスの延長として詐欺に遭うため、事前に警察に相談しているケースは皆無であり、詐欺と気付いてからもビジネスへの影響を最低限に止めようと隠蔽に必死になるため、発覚が遅れる場合が多い。また、起死回生を巨額融資に賭けていた実業家の場合などは、そのまま致命傷となる事も多い。

M資金詐欺から派生した手口

M資金と同種の詐欺ながら、近年では『いわゆるM資金とは別』などと前置いてから、下記のような様々なバージョンの話で詐欺を働いているケースが知られている。

  1. “某国の独裁者とその夫人が、密かに日本に持ち込んでいた秘密資金がある。その運用を任せられる相手を探しているそうなので、○○夫人を紹介しよう(→そっくりさん登場)。○○夫人は君に運用を任せても良いと言っているが、かなりの額の保証金を要求していて...” (1970~80年代に流行)
  2. 日本海海戦で撃沈された帝政ロシアの軍艦から引き揚げられ、ソ連との紛糾や課税を逃れるために、鉛のインゴットだと虚偽報道された大量のプラチナ塊がある。だが、引き揚げに成功したものの国税当局に目を付けられているため、思うように換金できない。このプラチナを換金するために協力してほしいのだが、それなりの保証金を積んでくれれば、プラチナの現物を預けるので...” (1980年代に流行)
  3. “第二次大戦中に米国が計画していた毛沢東向け秘密援助資金として準備された大量のドル紙幣が、国共内戦の勃発で利用されないままに終わり、米国に依頼された日本政府が運用を行い、数十兆円の規模にまで膨らんでいる。これが本当のM資金で、銀行が融資できないようなハイリスク事業への貸付資金となっているが、融資を受けるには保証金が必要で...” (1990年代中頃に流行)
  4. 産業廃棄物から燃焼性ガスが生成できる『新発明』の処分プラント設備がある。プラント設置と廃棄物の供給は無料で行えるのだが、燃焼性ガスをエネルギー源として利用したがっていてプラント設置区画を提供してくれる国や企業を紹介してほしいのだが、それには保証金が必要で...” (1990年代後半に流行)

また、規模や金額は小額ながら、近年流行している“架空請求詐欺”や“振り込め詐欺”といったケースで、『弁護士立会い』『裁判所命令』『和解手続き』『還付金』といった、多くの被害者にとって非日常的な用語を多用して、被害者の思考を麻痺させている点に、M資金詐欺の強い影響が窺える。


脚注

  1. ^ 経済科学局(Economic and Scientific Section 略称ESS)は、連合国最高司令官(SCAP)への助言を任務として、1945年9月に設置された。
  2. ^ その他にダグラス・マッカーサーMSA協定フリーメーソン(Freemason)などの頭文字とする説など。
  3. ^ 「M資金―知られざる地下金融の世界」高野孟著, 日本経済新聞社 (1980/03), ASIN: B000J8ACKG
  4. ^ 「M資金」県議も関与 本人「紹介しただけ」 高知新聞 2006年6月29日
  5. ^ M資金詐欺で無職男逮捕/30人から数億円を詐取か 四国新聞 2007年7月5日

関連項目

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